• 2017年04月13日登録記事

田牧大和著「甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子囃」

【あらすじ】
両親亡き後、跡を継いだ叔父によって菓子司「百瀬屋」を追われた菓子職人・晴太郎は、弟・幸次郎と菓子司「藍千堂」を始めた。父の教えを守り、工夫を凝らした菓子で、廃業を迫る叔父の嫌がらせに対処していく。

江戸の和菓子職人が主人公の連作短編。
この手の職業もの小説はハズレが少なく、本作も期待通り面白かったです。ただ、主人公とは性格が合わず、少しイライラもしました。
弟の幸次郎も、有能と言われていてもそれは表現だけで、実際の業務描写からは感じられなかったのが残念です。

本作で描いている、夢追い人だが能力はある兄と実務家の弟という組み合わせは、有川浩著「シアター!」の兄弟のポジションを逆転したようなものです。春川兄弟は良くて、本作の藍千堂兄弟は好みでない、と思うのはなぜかを考えてみると、より強い立場である兄の側が薄ぼんやりしている点が私の気に入らないようです。
晴太郎が兄であり店主である以上、幸次郎はストッパーとして機能し切れず、だから物足りないのかなと思います。

また、全話を通しての謎と設定されている、叔父が晴太郎を追い出した理由について、最終話で「そんなことで?」と思ってしまったのが残念。もちろん、本人からすれば許し難い事実で衝撃を受けるのもわかるけれど、それが砂糖まで変えて仕事の質を落とすというのは感情優先過ぎて、納得できませんでした。