加納朋子著「ななつのこ」
【あらすじ】
短編集「ななつのこ」に惚れ込んだ駒子は、作家・佐伯綾乃に、身近で起きた不思議な事件の話を添えてファンレターを送った。すると、作家からは鮮やかな推理が返され、2人の奇妙な文通が始まる──
面白かったです。
そして、日常ミステリーという括りで扱って良いのか悩む、文学的な香りの作品でした。
「ななつのこ」は、作中作である「ななつのこ」と同様の連作短編構成ですが、1編ずつに駒子の日常の一コマや遭遇する事件、そして佐伯綾乃著「ななつのこ」のお話が盛り込まれている入れ子構造で、同時に2つの物語を楽しんでいるような「お得感」があります。
1つずつの短編としても、全話通しての長編として見ても完璧な作りだと思います。ともすれば嫌味に感じるくらい、行儀のいい優等生といった風情の作品ですが、愛嬌のある主人公がその嫌味を巧く中和しています。
安楽椅子探偵役を務める佐伯綾乃の正体という謎に関しては、読書中一切気にしていなかったので、最終話で驚かされました。「バス・ストップで」の段階で、作者は住まいが近そうだと気付いていたのに……。駒子に比べると、お話しにならないくらいお粗末な観察眼です。