イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳「黄金の少年、エメラルドの少女」
美しいタイトルと裏腹に、非常に深い陰影を持つけれど頑なな人々と、灰色の世界が描かれた作品集でした。
中・短編9作を収録。
- 優しさ
- 彼みたいな男
- 獄
- 女店主
- 火宅
- 花園路三号
- 流れゆく時
- 記念
- 黄金の少年、エメラルドの少女
どの作品も、最初から最後まで読まないと、語っている内容がなかなか掴めない作りだと感じます。
そのため、一作目の中編「優しさ」は、着地点どころか出発点も定かでないまま、淡々とした語りを読まされ、非常に苦労しました。二作目以降は、作風を理解したのと、比較的短くまとまっていたので、ある程度面白がることもできました。
しかし、全体的に人と人の距離や、分かり合えない怖さを漂わせて終わる物が多く、腹の座りが悪かったです。
そんな中、表題作の「黄金の少年、エメラルドの少女」は、割と優しい終わりで、最後にホッとしました。個人的には、読み飛ばしそうなくらいさらっと同性愛者であることを織り込んでいる箇所に唸りました。
表題作の他には、哀しい物語だけれど、三人の少女の別れが描かれた「流れゆく時」が好きです。
また、代理出産を題材とした「獄」は、テーマも興味深いし、無教養・無教育な若い女の描きかたとして勉強になりました。