• 2017年01月05日登録記事

福田和代著「タワーリング」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
建築技術の粋を集め、最新鋭のセキュリティを備えた高層ビル・ウインドシア六本木を、目的不明の犯人グループが、最上階に住むビル会社の社長を人質にした上、システムを逆手にビルを封鎖して乗っ取った。社長救出を狙うビル会社社員・船津たちと、突入を計る警視庁は50階へ乗り込むも、思い掛けない方法で犯人に脱出されてしまう。

ビルジャック小説。
犯人たちは紳士的なので、身の危険を感じる事なく楽しめました。悪く言えば、緊迫感が薄いのかも知れませんが、サスペンス系を読み慣れていない私としては、このくらいの適度な刺激の方が安心して読めます。
割と身近にあるけれど、実際は知らない建物の構造や維持管理を生かしている点が気に入りました。
最新鋭の高層ビルの建築技術やセキュリティ、防災システムを説明して、舞台をしっかり組み立てた上に、それを逆手に取る犯人たちのやり口が描かれるので、非常に面白く読みました。

ただ残念ながら、オチで躓きました。
犯人グループの動機が弱過ぎると思います。
一応読み直して、なるほどこう描写されていたか、とある程度納得もしましたが、黒幕は演技派過ぎるし、どのメンバーも「ここまでやるか?」と、途端に腑に落ちなくなってしまいました。
特にロッキーは、「川村を痛めつけたい」という独白があったのに、この計画ではまったく達成できないので疑問でした。