- 分類読書感想
南原幹雄著「天下分け目」
祥伝社から刊行された「それぞれの関ヶ原」の改題。
珍しく全体的に東軍贔屓の短編集。
- 大木土佐が、加藤清正の妻を大坂から脱出させる「脱出船」
- 堺の鉄砲鍛冶が伏見城へ銃を納品しようとする「風雲伏見城」
- 鴻池直文が摂津から清洲へ清酒を運ぶ「天下分け目」
- 国友一族の大砲建造を描いた「近江国友一族」
- 石田家臣団からの寝返りを決意する「裏切り一万石」
- 刑部の首の行方を探す「功名首」
- 初代半蔵が秀頼暗殺を試みる「虚空残月」
名のある大名ではなく、侍大将以下の武将や市井の人の話にとっても関ヶ原は大きなターニングポイントだったということが伝わる作品揃い。
ネタバレになってしまうため詳細は避けますが、「功名首」で明かされる解釈にはあっと驚かされました。私自身は三成贔屓ですが、大谷吉継が一族や家臣への責任を捨てて友誼を選ぶだろうか? と疑問を抱いていたので、これは結構あり得る展開だと思いました。
「虚空残月」は、アニメ「信長の忍」に二代目半蔵が登場していたので、なんだかタイムリーなお話だったなと思いました。
少しだけ、重箱の隅。
作中、「役不足」の誤用がありました。現代物だと、こういった言葉が誤用されていても「現代語だから」と思って気にしないのですが、時代小説だと少し気になるものだな、と思いました。