• 2017年01月03日登録記事

バーネット著 伊藤整訳「小公女」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
ロンドンの寄宿舎に預けられていたクルウ大尉の一人娘サアラは、父の急死により身寄りも財産も失い、裕福な暮らしから一変、屋根裏に追い立てられ使用人にさせられる。しかし貧しい暮らしをしようとも、「公女様のように振る舞いたい」と心掛けるサアラの態度は、密かに人々の心を打っていた。やがて父の共同出資者だった大富豪の紳士と巡り会い財産を取り戻したサアラは、経験をもとに、ひもじい子供への慈善を行うようになる。

世界名作劇場「小公女セーラ」の名前で馴染んでいるため、「サアラ」読みに最初戸惑いましたが、昭和二十八年発行という古い訳本にしては、比較的読みやすい訳でした。

児童文学の傑作だと思います。
本作は、岩波少年少女文学全集かなにかで読んでいましたが、大人になってからは初めての再読。展開は全部知っていたけれど、人々の態度の変化は改めて気付いた点のように思います。子供たちの中で本気でサアラにキツく当たる者は、最初から気が合わない者であって、小さい子供たちは周りの大人の態度に引き摺られているだけだと感じました。

主人公サアラは7歳の幼い少女なのに異常に「できた人間」なので、立派だと感心はするけれど、共感は難しいです。いけ好かないと感じるラヴィニアの気持ちもわかります。
自分の空想に支えられている、という点は、赤毛のアンや少女パレアナ(ポリアンナ)等、多くの少女小説の主人公と一緒ですが、自分の苦しい環境を少し楽にするだけでなく、気高く生きるという時限にまで達しているので、応援せざるを得ないと感じました。
そしてそんな彼女だからこそ、腹が空いていることを激白するシーンでは、アーメンガアドと一緒に衝撃を受けました。
終盤、料理等が届けられる「魔法」の下りは、それを受けるサアラたちの視点からも、仕掛け人の視点からも、嬉しく心が弾み、以降は結末まで暖かい気持ちで読めました。