アーサー・コナン・ドイル著 日暮雅通訳「バスカヴィル家の犬」(新訳シャーロック・ホームズ全集より)
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
ダートムアの大富豪バスカヴィル家には呪いの伝説があり、それを裏付けるかのように当主が奇怪な死を迎えた。ワトソンはバスカヴィル家の後継者ヘンリー卿に同行してダートムアへ赴き、見聞きした事をロンドンのホームズへ書き送る。やがて、ワトソンは荒野に潜む男がいることに気付くが、それは犯人の目を欺き証拠集めをしていたホームズだった。2人は依頼人を囮にして、遂に犯人を逮捕する。
シャーロック・ホームズ作品は、子供時代に「緋色の研究」を既読ですが、記憶に残っていません。
関連作品中、最も人気がある長編作品との呼び声が高い本作を読んでみました。
意外にも、ホームズはあまり登場せず、ワトスンがメインで活躍します。ワトソンが自分なりに推理しながら地道な捜査を展開するのが面白かったです。
ただ、ワトソンが村人を「教養がない人たち」と評する箇所があり、こんな毒舌な人物だったのかと驚きました。
それにしても、こんなに四六時中ホームズの手伝いをしていたら、ワトソンはいつ自分の仕事をするのでしょう。開業医なんですよね?
犯人を推理する余地は余りなく、最初から怪しい人物がそのまま犯人でした。そもそも、ミスリードを誘うほど多くの人物は登場しませんでした。そのため、ミステリとして面白いのか否かは良く分かりません。
ホラー(猟奇小説)や冒険小説のような味わいの方が大きい気がします。
結末は呆気ない感じ。依頼人は生命を守られたとはいえ、心を病んでしまったので、後味の悪さもあります。
風景描写などは非常に凝っていて、ダートムアの荒涼たる大地が思い浮かびました。
解説に、この作品の成り立ちに諸説あることが説明されていました。正直なところ、本編以上にこの話が面白かったです。