梨木香歩著「西の魔女が死んだ」
【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
不登校の中学生まいは、大好きな祖母の家に預けられる。祖母の教えや田舎暮らしでまいの心は次第に解れるものの、ある日、嫌悪感を抱く隣人のことで、祖母と大喧嘩をしてしまう。その直後、まいは両親の下に帰ることになった。2年後、祖母が亡くなり、まいは確執を残したまま別れたことを悔やむが、窓ガラスに残された祖母からのメッセージで、魂は生きていると信じ癒される。
センセーショナルな題名の児童文学。
実は長年、「西の善き魔女」と混同していました。本作もファンタジーではあるけれど、異世界ではなく現代日本が舞台のお話。魔女というのも、自然を利用したシャーマン的な存在でした。
おばあちゃんとの日々は穏やかで美しく、こんな生活をしてみたいと思わされます。示唆に富んだ台詞の数々は、正に思春期の少女の為の物語だと思いました。特に、結末に関わるおばあちゃんの死生観は見事です。
現代社会に対する説教的な側面もあるのですが、非常に穏やかで柔らかい説教ですし、死を扱いつつも、お涙頂戴の展開ではないので、やんわり染み込む読了感があります。
なお、表題作の他に、その後のまいを描いた「渡りの一日」が収録されており、おばあちゃんの教えを守って成長したまいを見ることができます。
良いサービスではあるけれど、「渡りの一日」自体は少々退屈な話で、単品としてはあまり面白くなかったのが残念でした。