• 2013年12月28日登録記事

須賀しのぶ著「帝冠の恋」

【あらすじ】
オーストリア帝国の大公に嫁いだ王女ゾフィーは、凡庸な夫と帝国の体質に苦しめられ、次第にナポレオンの血を引く義理の甥フランツに惹かれていく。ゾフィーは愛故に恋心を押し殺し、フランツを帝国から解放しようと画策するが――

主人公のバイエルン王女ゾフィーとは、ミュージカル「エリザベート」で鬼姑として描かれるゾフィー皇后のこと。政治的に手腕を持った権力者であり、激しい恋をするけれど身は滅ぼさないクレバーな女性として描かれています。
元々、私は「エリザベート」の登場人物でもゾフィー皇后が好きだという加算点もありますが、お話のテンポは良いし、歴史物に欠かせない背景説明も分かりやすく、どのキャラクターも単純な善悪ではない魅力があり、大変面白かったです。
個人的には、肝であるフランツとの恋愛より、政治話や、愚鈍を自覚している夫カールと歩み寄るシーンや、リヒテンシュタイン=エステルハーツィ伯爵夫人との友情などに魅力を感じました。

エピソーグは、フランツ・ヨーゼフがエリザベートを見初めるエピソード。ゾフィーは若い2人に昔の自分たちを重ね、彼らに帝国の将来を賭けてみようと決意します。
歴史を知らない人が読めば未来へ希望が託されたように見えるし、知っている人であれば皮肉な終わりかたなのですが、メッテルニヒ宰相が時代遅れになって切り捨てられたように、歴史は繰り返していくわけですね。