• 2015年10月登録記事

ロダーリ著 関口英子訳「猫とともに去りぬ」

タイトルを目にした時点では、「高慢と偏見」に対する「高慢と偏見とゾンビ」のように、「風とともに去りぬ」のパロディ長編なのかと思っていたのですが、実際はファンタジックな短編集でした。
全16編。

著者ジャンニ・ロダーリは、国際アンデルセン賞も受賞している児童文学作家ですが、本書は全体的にシュールすぎて、子供に読ませたいとは思いません。どちらかと言うと大人向けな気がします。
表題作にして最初に収録されている「猫とともに去りぬ」は、比較的柔らかいオチを迎えるのですが、それ以降の作品は私が不得意な「皮肉が効いたユーモア」なので、反応に悩みました。さすが、イタリア人作家……。なにかの比喩だとか考えずに、そのまま読んでシュールさを楽しむべきなのか、もう少し頭を働かせた方が良いのか、理解するには難し過ぎました。でも、ファンタジックな出来事を断定的に描く表現は面白いし、発想力には脱帽します。

「ピアノ・ビルと消えたかかし」で、最後にシューベルトのアヴェ・マリアを弾くことを拒む理由が分からなかったので、どなたか教えてください。単にバッハに傾倒しているから?

後回しと言っておきながら、こっそり3DSのお店経営ゲーム「王国の道具屋さん」をプレイしました。
http://www.nintendo.co.jp/3ds/eshop/kdgj/
早々に経営する道具屋がレベル7「王国の道具屋さん」になり、隠しダンジョンのボスを倒し、全アイテムを作成しました。
称号獲得というコンプリート要素は残っていますが、傭兵のレベルを上げたりしないといけないので、残りは気長にやります。

システム的な楽しさは体験版の通り。
「アトリエ」シリーズや冒険酒場との大きな違いである、戦闘はプロに任せる仕様で、素材回収がサクサク進むため、経営もサクサクしています。お客さんもガンガン回ってくるし、電源を切っていても経営は進行するので、あっという間に売り上がります。非常に爽快です。
体験版になかった「注文ポスト」は、お客さんの要望に応じてアイテムをお届けしてイベントを進める仕組みですが、街の人々の営みや関わりが見えるのが面白い良要素。ほのぼの系で纏まっているのかと思いきや「ドアの向こうの君へ」のような、哀愁感のある結末を迎える話もあり、これも楽しめました。

惜しむらくは、サクサク進み過ぎで、ボリュームが少なく感じること。
例えば私の場合、「王国の道具屋さん」になったのはプレイ開始後7時間くらいでした。
隠しダンジョンのボスはさすがに強敵で、初めて撃破したのは10時間を超えた辺りでしたが、「王国の道具屋さん」になった時点で「注文ポスト」も打ち止めで後は材料集めと合成を繰り返すだけだし、作れるアイテム種類も175個と、思ったほど多くありません。
このボリュームからすると、購入時のセール価格400円であれば満足しますが、定価800円という設定は、やはり割高に感じると思いました。

ボリューム不足は致し方ありませんが、出来がいいのは確かなので、そのうち「1日1回しかクエストしないゆっくり経営」等の縛りプレイをしてみようかな、と思います。

原田マハ著「キネマの神様」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
歩は、父ゴウをギャンブルから遠ざけるため、映画ブログを始めさせた。ゴウの素朴で優しい評に対し、ある日H.N.ローズウッドなる人物が切れ味鋭い批評を書き込んだことから、ブログは2人の公開討議場になって大評判となる。やがて2人の力は閉鎖しかけていた名画座を救うが、ローズウッドは病死してしまう。気落ちしたゴウを誘った名画座は、タイトル前に2人の名をクレジット(The Name above the Title)して2人の愛する映画を上映する。

最後まで読んで「The Name above the Title」という副題に納得し、映画が観たくなる一冊。
作中、キーとなる映画が幾つかあるので、その内の1つでも見ていると、その記憶が刺激されて感動が蘇って来て、より楽しめると思います。

最初は非常に遅々とした話で、どんな展開になるのか見えませんでしたが、ブログが始まったところから一気に面白くなり惹き込まれました。
トントン拍子に事が進むので「そう巧くはいかないぞ」と思うけれど、物語なんだから構いません。
唯一、時系列が前後する箇所があるの、必要もないように感じて、あまり好ませんでした。

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電撃コミックス「GOD EATER -side by side-」
http://maoh.dengeki.com/try/ge-sidebyside/

ゲーム「GOD EATER」(無印・BURST)本編より過去を描いた漫画。
NPCキャラクター大森タツミを主人公に、防衛班(第二部隊・第三部隊)を描くストーリーということで、BURSTしか遊んでいないけれど班長好きであるからには抑えておこう、と思って発売日から一か月遅れで入手。
プロローグ+4話分という短さが残念でしたが、TVアニメではモブレベルの出番しかなかった第三部隊もメインで活躍しているので、防衛班NPC好きなら楽しめると思います。

班長は前向きで根から明るいタイプだと思っていたので、任務に一杯一杯で肩の力が抜けていない感や落ち込みが激しいところは少し意外でしたが、まだ成長し切っていないと思えばこんなものかな。年齢的にもまだ若いですからね。
なお、作中では10歳から描かれ、第2話で2068年=20歳になっている筈ですが、童顔なので、見た目からはあまり変化を感じません(笑)。

ゲームに登場しないオリジナルの名付きキャラクターがいる時点で、展開は読めていましたが、退場が思ったより早かったです。
「逝くヤツがいりゃあ、来るヤツがいる」(2013年5月15日記事参照)の台詞は班長オリジナルでないことになりましたが、KIAが出る度に彼の死を思い出しながら呟いていたのかも、と新たな想像ができるようになりました。

プロローグでは、外部居住区時代の真壁兄弟も登場。
十代でも既に2の「ハルさん」の尻尾が見え隠れするハルオミに対し、テルオミは可愛い少年でした。こんな可愛い子でも大人になると変態気質になってしまう真壁家の血筋、怖いわ。
ゲームスタッフが原案の公式漫画ですが、若干ゲームとの齟齬があります。ハルは最初は極東支部配属だったとデータベースにあった筈ですが、漫画では最初からグラスゴー支部に配属されていました。気になるほどの違いではないですが、第一世代神機を使っているハルと組んでいる班長も見てみたかったなと思います。