• 2017年12月13日登録記事

相沢沙呼著「小説の神様」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
売れない作家である男子高校生・千谷は、売れっ子美少女作家・小余綾と共作することになり、小説を書く楽しさを取り戻し始める。しかし自作の打切りやネットの批判に気落ちした千谷は、小余綾の良作を自分が壊す恐れに耐え兼ね、喧嘩別れで共作から降りる。だが実は小余綾は盗作疑惑を受けた心的外傷で、文章を書けなくなっていた。それを知った千谷は、共作を仕上げ、物語に願いを託す。

文字は小さめで400ページ近くあるので、結構長いお話です。その物量で、ひたすら「なぜ小説を書くのか」という質問を突き付けてきます。その上、主人公が非常にネガティブ思考で、読み手も憂鬱になります。
途中飽きそうなものですが、最後まで読ませるのだから大した筆力だと思いました。

結局、序盤に想像した通りのネタバレがあり、序盤に想像した通りのオチに行き着きます。
そして「それで良い」と肯定するのがこの物語でした。

ところでこの主人公が書いた作品、もう少し具体的にイメージさせて欲しかったです。
売れ線から外れていて、でも人によっては心を打つ作品なんだ、という印象が持てませんでした。

登場人物は強い個性があるけれど、前述通り主人公がややネック。
後輩の成瀬に「売れる本を書け」という主人公が一度も売れていないのは、なんだか滑稽でした。そんなに売れたいと思っていて、且つ売れ線を理解しているつもりなら、一度、そのノウハウを全部投入した別名義の小説を出せばよかったのです。
そして自己弁明と嫉妬で忙しい主人公にイライラが募っていくと、主人公に親身でありつ続ける少女たちにも激しく違和感を感じてしまいました。
例えば成瀬の場合、小説を書きたいだけなら、小説投稿サイトの存在も教えて貰ったのだから、友達にバレる危険を冒してまで文芸部に入る必要はありません。八つ当たりされたり、嫌味なことばかり言われても離れない方が不自然だと思わされてしまいました。