• 2017年12月18日登録記事

朝井まかて著「阿蘭陀西鶴」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
俳諧師・西鶴の娘おあいは母を亡くし、父と暮らすことになる。甲斐性なしで勝手気儘に振る舞い、母の死や全盲のおあいを引き合いに自身を喧伝する父と憎むおあいだったが、西鶴が書き始めた浮世草子の朗読を聞き、物を見たことがない自分でも、描写から感じて掴むことができる喜びを知る。

面白かったです。
井原西鶴の半生を直接書くのではなく、盲目の娘の視点から、破天荒な父、俳諧の師、そして作家としての西鶴を描いているところが秀逸だと思います。最初は思春期のおまんと一緒に西鶴に苛々するも、彼女の心が解けていくと同時に、家族思いのいい父親じゃないかと印象が変わっていきました。

西鶴の移り気に合わせて、あちこち話が飛ぶところはありましたが、それぞれの出来事は細い糸で繋がっていたと思います。
「好色一代男」だけでなく、様々なジャンルの先駆者だったとは知りませんでしたが、それら作品を生み出す原動力は、博識だけでなく、こういう「イラチ」なところにもあったのでないかと思わされました。
西鶴の作品を読みたくなりました。ただ、さすがに現代語訳でないと読めないでしょうね。