• 2014年05月登録記事

恩田陸著「上と外」

【あらすじ(上巻ラストまでのネタバレ有り)】
離婚した家族が集まる恒例の夏旅行で中米を訪れた中学生の練は、軍事クーデターに巻き込まれ、妹の千華子と共に移動中のヘリから密林の中へ落ちた。道具と知恵を駆使して救出を待つ2人だったが、遂に千華子が脱水症状を起こし倒れたところを謎の少年ニコに助けられる。しかしニコは千華子の安全と引き換えに、「マヤの成人式」に参加するよう練に要求する。その成人式とは、王=ジャガーと3日間対峙し生き延びるという内容だった——

前半は説明が多くて歩みが遅い上、この先どう展開して盛り上げるのか想像も付かず、正直退屈だったのですが、兄妹がジャングルの中を動き始めてからは一気読みでした。

この作品は、読み進めるごとに印象が変わりました。
まず最初は、1つの家族というコミュニティが崩壊する、人の心の抉るような社会小説という印象。時系列が時々引っ繰り返る不思議な書き方で、スタンリー・キューブリック監督の映画が小説として生まれ変わったような感じです。
でも最後は、千鶴子と千華子がちゃんと抱き合えてホッとしました。
それだけに、練と家族の再会が描かれなかったのは残念ですね。そこまで描かれていれば、4人は再び「家族」になれたと実感できただろうし、賢と練がお互いの存在をどう受け止めたのか気になりました。

上巻の後半になると、密林の中でなんとか生き抜いていく兄妹に、マヤの遺跡や闇から覗く謎の人影の存在がのしかかる、どこか不気味なミステリーに変貌。ここには、「ガダラの豚」2巻のアフリカ取材のオドロオドロシさに匹敵する、忍び寄る怖さがありました。

下巻は、成人式を乗り越えるために知恵と体力を使う練、地下水路から抜け出そうとする千華子という、少年少女が困難を乗り越える冒険ものとして分かりやすく楽しめました。
面白いことに、ジャガーは確かに目に見える怖さがあるけれど、上巻での闇の中になにがいるのか分からない恐怖に比べると安心して読めました。読者である私にとっては、というだけで、練は生きた心地がしなかったでしょうけれど。

十代前半で、こんな知識量と解決能力がある子供がいるか!とか、ややご都合な部分はありましたけれど、面白い読書体験でした。

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南葛西を歩いていて見付けた、環状七号線の路面店「Patisserie LE AMARETTO」。
http://amaretto.co.jp
外観に惹かれて入店。店内はディスプレイも凝っていて、ケーキからコンフィチュールまで幅広いラインナップで、なかなかお洒落な作りで驚きました。

店で一番人気の商品ということで、写真の「東京フロマージュ」と「ふわとろショコラ」を頂いてみました。
本当にふわふわのスフレケーキ。1つ食べた後、「もう一つ食べたいな、食べても良いかな」と思うくらい軽いです。実際、類似製品に比べて小振りな気がするので、2個は許容範囲かと……。
フロマージュは、チーズの塩気が利いていて味は強め。ショコラは優しい味わいでした。

個人的に評価したいのは、POSシステムを使っていて、レシートに製品名が記載されていたこと。いつもこういうお店のケーキ屋さんだと、製品名をメモしておかないと何を頂いたのか分からなくなるのですが、このお店だとその心配はありませんね。
今度は生ケーキを頂いてみたいです。

現在地:バルクルーサ城(銀の鈴入手)

地点情報だけだと、前回の日誌から全然進んでいないかのようですが、数時間のプレイ時間を経ています。
シノブとも合流したし、シノブ編で登場した用心棒(ゼフュードル)と因縁があったことも判明しました。
で、下記のとんでもない展開になりました。

  • 徴発された人々が体内に爆弾を埋め込まれ自爆。
  • 黒竜の咆哮で村1つ壊滅。その後、毒師の手でゾンビ村に生まれ変わる。
  • 町を魔物が占拠。人間が次々喰われる。

順番に語っていくと、まず何気なく入った牢屋で閉じ込められ、壁越しに隣の牢と話していたら、会話中にその相手が魔物に喰われてしまいました。後で覗いた隣の牢には壁に寄りかかった死体が残っているという描写に、まず唖然。
その後、潜入した王城は、人々が眠らされているのに眠りながら敵を排除しようと襲いかかってくるというカオスな状況。
どうやら、三使徒を名乗る美女3人が、黒竜を目覚めさせようとしているようです。
さらに例の黒髪の人形から黒竜を倒す「剣の継承者」になる勧誘を受けたところをシノブの式神に助けられ、ようやくシノブとカイエスが一緒に旅することに。
この後はゴーレムを使役する少女や毒に傾倒している薬師とのやりとりなど、多少コミカルな展開を挟みつつ、兵士たちが暴きに行った黒竜洞の危険性を知ったので、中止させるため追いかけることを決意。
ちなみに、黒竜洞で3つの扉を選ぶところは、右の入り口を選択しました。学者たちが右は強い敵が出ると言っていた記憶があったので、敢えて挑戦。ボス戦の代わりに、ダンジョンをショートカット出来たようです。

で、ここからが冒頭に書いた通り大変な事態になりました。

自爆

喰われる

必死の思いでバルクルーサに戻ったら、戒厳令が敷かれており、関所破りをする羽目に。街の中でも兵士に話しかけると戦闘になるのですが、この国の貴族と兵士の腐敗っぷりはどうしようもないので、憂さ晴らしに全員倒してしまいました。全員倒した後になって、カイエスの台詞を聞いて問題が生じたらどうしようと思ったけれど……。酒場で小銭を貰えたから良いのかな。

酒場で再会したゼフュードルはとんでもなく強かったですが、意地で一騎討ちしました。
幸い、王城前を出入りするとたまにエンカウントするので、レベル上げできました。このゲームは、レベルを1つ上げるだけで、目に見える数値以上に体感で回避しやすくなる気がします。

サマセット・モーム著「夫が多すぎて」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
戦死した夫の友人と再婚した美女ヴィクトリア。ところが、戦死は誤報で夫が戻ってくる。ヴィクトリアとの結婚生活にうんざりしていた夫2人は、自己犠牲的精神を装ってお互いにヴィクトリアを譲り合おうとする。ヴィクトリアは大金持ちを射止めて2人と離婚し、三方が丸く収まる。

3幕ものの戯曲。
1幕はヴィクトリアが自分の妻だと思っている1人目の夫に再婚を伝えるところ、2幕はヴィクトリアの奪い合いに見せかけた譲り合い、3幕は離婚裁判に関する風刺が山になっています。
ストーリーも登場人物もシンプルでコンパクトなお話でした。

翻訳物の喜劇戯曲は、傑作と謳われている作品でも、台詞だけ読んだだけでは面白いかどうか私はいまいち実感できません。コメディ作品は、演じる俳優の力に左右される部分が大きいと思うからです。
しかし、本作では、妻の自己中心的な我が侭にうんざりしていた2人が、「友情」と「愛情」で誤摩化しながらお互いに妻を押し付け合う2幕はウィットが利いていて、ト書きならではのリズム感もあって面白かったです。
逆に、3幕は当時の風俗が影響するので、現代日本人が当時の民衆と同様に嘲笑できるか微妙ですね。離婚裁判のため、夫の浮気相手を弁護士が用意する(しかもそれを専門に請け負うご婦人がいる)という辺りなんかは、協議離婚がない国だけあるなと興味深く感じましたが。

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ゲームアーカイブス「黒の剣 Blade of the darkness」を始めました。
→黒の剣 ソフトウェアカタログ
現在地:首都バルクルーサ(カイエス編)

本作は「シナリオが良い」と局地的に絶賛されたPC-98用ゲーム、のPS移植版、のダウンロード配信版です。

スクリーンショットを見ると、一見、移植のためコンシューマー向けにしたアダルトゲーム作品に見えます。私も長年そう思っていたのですが、実はアダルトゲームメーカーが作った一般向けゲームなんですね。

今のところ、かなり面白いです。
シノブ編は、首都バルクルーサに到着した後、どう行動したら良いのかフラグ立てが分からず困る局面がありましたが、最後に不安と謎を掻き立てる展開が起こり、先が気になったところでカイエス視点に戻る展開が巧いですね。
更にその後、港町に着いて「ああ、ここに繋がっていたのか!」と気付いた瞬間から、すっかり物語に引き込まれてしまいました。
その後も、シノブ編を経ているために、カイエスとプレイヤーの当面の目的意識が合致している気がします。

1本道シナリオですが、道が繋がっている箇所はいつでも行けるようです。
シノブと合流してから行くと思われる温泉町も、この段階で通行証を取り替えれば行くことは可能でした。もっとも、町の入り口を兵士が封鎖中のため、中には入れないし、雑魚が強くて帰り道で全滅したのですが。

難易度は、理不尽とは言わないけれど、敵が強めの調整であることは確かです。
NEW GAMEすると始まるシノブ編では、町を出て最初に出会った雑魚戦でいきなり死亡して、オープニングからやり直しになりました。
移動中にHP・MPが回復するため、魔法やスキルを惜しみなく使っていくバランスになっているようです。
一応、自分は前知識を持って遊んでいることもあり、この辺の尖り方は、逆にレトロゲームを遊んでいるという実感で愉しみに変換可能でした。昨今のゲームは、多重の意味で「やさしい」ことも実感できました。

システム面や一枚絵以外のグラフィックは、スーパーファミコンの初期作品という印象。
TV画面でのプレイを想定しているためか、イベントシーンの字幕は小さいです。ただ、音声が意外と入っているので、音を出せる環境であれば、字幕は見なくても問題ないでしょう。
全滅頻度の高さを考えると、イベントスキップができないのは不便ですが、その代わりどこでもセーブが可能なので、ある程度許容できます。

物語は、難破船に乗っていた少女シノブが目覚めたところから開始。
背に負った黒鞘の剣を託す剣士を探して首都バルクルーサへ赴くも、遺跡から「発掘」された、自分と同じ黒髪の少女と対面し、ホルマリン漬けのような状態の彼女から「我が子孫よ、我に命を与えよ」と呼びかけられる。

——というシノブ編の展開は、カイエスが呪い師の魔鏡を通して見た光景だったようです。オープニングの後突然シノブ編が始まったことに疑問を抱いていたのですが、こういう構造だったんですね。
その後は、魔鏡に映った行くべき道=シノブを追って、カイエスも首都へ向かいます。……彼自身はなにも口にしないので分からないけれど、シノブの身になにが起きたのか知り、必要とあらば彼女を助けるためですよね。
少し遅れて追い掛けている図なので、そこかしこで、シノブの痕跡を感じるのが面白いです。
この国では、騎士団が腐敗している様子や、先住民を追い出したらしい過去などの暗さ、貴族は高いところに住みたがる(低い土地を嫌う)などの謎が満載で、かなり深い物語が期待できそうです。