• 2015年08月03日登録記事

枡野浩一「ショートソング」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
憧れの先輩に連れられて歌会に参加したことを切っ掛けに、国友克夫は短歌を作り始める。先輩の恋人である歌人・伊賀は国友の才能を認め可愛がるが、同時に才能が枯れつつある自分と比較し国友に嫉妬を感じる。やがて二人は、それぞれ分かれて創作を続け、歌集大賞に応募する歌集を作り始める。

国友や伊賀、あるいは他の歌人の作として、短歌が頻繁に挿入されていますが、これらがすべて既存の歌だということに驚きました。
短歌が最初にあってストーリーが浮かび上がったのか、ストーリーが出来て後から短歌を当てはめたのか、どちらにしても結構大変なことだなと思います。
短歌がテーマの小説というから、もっと格調高いのかと思ったのですが、短歌というものは日常に密着しているものなんですね。もっと有り体に言えば、見たまま、感じたままを五七五七七に当てはめているものがほとんど。作中「一人称の文学」と説明されていることから、私小説みたいなものなんだな、と理解しました。

全編通してエロ(セックスシーン、AV、下ネタ発言)が多いのですが、ここまで明け透けだと、あまりエロさを感じないと思いました。
秘してこそ、エロスは引き立つのですね。
まぁ、人には薦め難い本ですね(苦笑)。加えて擬似BL、なんて思いながら読んでいたら妹のオチに苦笑いしました。

全体的には、短歌というまったく未知の世界に触れられて、予想外に楽しく読めました。
ただ、更紗が突然伊賀をストーカー呼ばわりしてきた件だとか、よくわからないままの要素もあります。恐らくiBookを失くした件と繋がっているのでしょうが、未解決のまま放っておくので、中途半端だな、と思う面もあります。

吉祥寺、池袋、鎌倉と、実際に行ったことがある範囲で、存在する店が出てくるため、なんだかカフェ紹介本でも読んでいるようでした。