• 2015年08月18日登録記事

宮下奈都著「太陽のパスタ、豆のスープ」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
婚約破棄され落ち込んでいた明日羽は、叔母からやりたいことをリストアップして解消していく「ドリフターズリスト」の作成を薦められる。リストに従って動き始める明日話だったが、それらが本当にやりたいことなのか悩み、それまでの自分が確固たる信念も理想もなく生きて来たことに気付かされ、一つずつの物事に真面目に取り組んでいくようになる。

どん底に落ち込んでいるところから、一進一退で浮いたり沈んだりを繰り返す明日羽はリアリティがあるのですが、肝心の立ち直る拠り所が「日常」なので、物語としては物足りなさを感じました。
失恋を機に自分自身を見つめ直すという成長物語なのに、作中ではもがく様だけで、成長は後日談的に描かれているんですね。
イベントが割愛されているという気がしてしまいました。
同じようなプロットなら「サムシングブルー」(2015年6月9日記事)の方が、主人公に共感したり応援したりできて楽しかったかな。

なにより、本書で語られている「ドリフターズリスト」がよく分かりません。
解説も含めて、「ドリフターズリスト」が良いのか悪いのか分からない状態で終わってしまい、結局読者に薦めたいのか薦めなくないのか分かりません。
率直に言えば、心に響かなかったです。
唯一、ルクルーゼの鍋は欲しくなりました(笑)。

いい点としては、題名がとてもキャッチーですし、食べ物の描写がとても素敵でした。
筆頭は豆。その力強さには、漫画「ガラスの仮面」で大地のモチーフとして豆をマヤが演じたのを思い出しました。