• 2016年04月16日登録記事

奥田英朗著「ララピポ」

【あらすじ】
欠陥住宅に住むフリーライターの杉山博は、蓄えを切り崩しながら生活する日々を過ごしていた。そんな中、上階に引っ越してきた若い男の部屋から漏れ聞こえるセックス中の女の声に興奮を覚え、やがて盗聴して自慰するようになる——

  • 1話 フリーライター杉山
  • 2話 上階に住む風俗専門スカウトマン栗野
  • 3話 栗野にマネージメントされている熟女モノAV女優の良枝
  • 4話 良枝の隣家に脅迫状を送り続けるカラオケボックス店員
  • 5話 カラオケボックスで女子高生と淫行する官能作家西郷寺
  • 6話 西郷寺の小説のテープリライター

という形で6人の登場人物の人間関係が少しずつ交差しています。
他の人物の話では脇役だった人が次の章では主人公になり、外からは分からない人間の内面が見えたり、実は人間関係がぐるりと循環していることが分かったりという要素は面白いです。
1話で博にとって都合のいい女として登場していた小百合が、博と寝た理由は、あまりに鮮やか、且つ思いもしなかった裏切りで、思わず膝を打ちました。

ただ、登場人物の関心が性的なことに終始していて下劣なので、最初は読んでいて辛かったです。自尊心だけ強い怠惰な人が落ちていくところを見せられても、私は不愉快だと思いました。どう楽しむべきか分からないです。
ちなみに、この本を読んだのと同日に、漫画「崖っぷちルームシェア」を読み、同じことを思いました。駄目な人間を描いた作品って、意外と需要があるんですね……。

そんなわけで、1話と4話は共感できない主人公にずっと腹を立てていてし、3話は気味が悪かったのですが、5話と6話は面白かったです。
読み慣れたのかも知れないし、この2つだけは割とハッピーエンドだからかも知れません。5話の西郷寺は最終的にホームレスになってしまうけれど、本人は心の平安を得たように思えたし、6話の小百合は三流の生活を自覚していて、それでも前向きでまったくめげずに強く生きているので、なんだか応援したくなる人物でした。
2話の栗野も、本人は精一杯仕事しているだけですし、普通知る機会がない風俗業界について勉強できて興味深く感じたので、トータルでは面白かったと言えます。