• 2017年12月登録記事

森沢明夫著「青森ドロップキッカーズ」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
苛められっ子の中学生の宏海は、体験教室で知った「カーリング精神」への感動から、カーリングを始める。先生に貰ったブラシを折られたことで宏海は初めて苛めに反抗し、幼馴染の雄大との友情を取り戻す。カーリング部のある高校に入学した二人は、大会の決勝戦まで進むも、ストーンへの接触(反則)を申告して気持ちよく負けることで、カーリング精神を身に付けた「格好いい大人」に一歩近付いた。

あらすじにまとめた「少年の挫折と再生」を描く宏海の物語と、「スポーツ選手の挫折と再生」を描く柚香の物語の2軸で、1本の物語が紡がれています。
スポーツ青春小説ではあるのですが、柚香たち大人の視点が入ることで、地元への普及活動、スポンサーの意向に左右される選手の在り方など、楽しいだけでは済まされない世界も盛り込まれ、多面的に競技が見えました。とは言え、やはり根本は清々しいところが良かったです。
途中宏海と柚香たちは男女二人ずつのチームを組むけれど、年齢・実力差が大きいこともあって、恋愛ではなく師弟関係で結ばれているところも爽やかでした。
強いて難を言えば、序盤のいじめ描写は気が滅入りましたが、再生のお話としては苦しみも書かないといけないから、必要な要素だったと思います。

本書を読んで初めて「カーリング精神」というものを知りました。要は「スポーツマンシップ」を明文化したものという感じだけれど、本書では非常に短くまとめた訳文を採用しています。

カーラーは、不当に勝つなら、むしろ負けを選ぶ。
カーラーは、ルール違反をしたとき、自ら申告する。
カーラーは、思いやりを持ち、常に高潔である。

原文やカーリング協会の日本語訳がぐっと簡潔にされていて、宏海と一緒に、これは格好いい!と思えました。

前回の続きで、DLCコンテンツ「EPISODE イグニス」CHAPTER3からEXTRA(if ED)含めた感想です。

エピソード イグニス

今回はストーリークリアしてもタイトル画面が変化しないな、と不思議に思っていたら、if ED到達後に大きく変化しました。ただし個人的には、元のタイトル画面の方が好きです。

注意:ゲーム本編・映画・アニメネタバレ満載です。
現在FF15プレイ中でネタバレを気にされる方は、進行状況を確認の上、ご自身の判断でお読みください。

クリア後は、CHAPTER 3で選択肢が追加され、まさかの「ゲーム本編に続かないルート」へ進むことができます。

アーデンと共に行く

アーデンは初報PVから登場していましたが、実際のプレイではCHAPTER3でようやく登場。正直、存在を忘れていたので、グラディオラスの姿で登場した時点では、グラディオラス本人だと思っていました。
そのため、弱っているレイヴスを見て「チャンス」と斬りかかる姿に、グラディオって本当に酷い男だなと思ったのですが、とんだ風評被害でした(笑)。

偽グラディオラス

声優の藤原氏が復帰後間もないためか、単純にFF15の仕事が久し振りなせいか、本編のアーデンより声が高く、演技の質が違う感じがする点がやや残念です。
一方、モーションは相変わらずの「らしさ」に溢れていました。

アーデンの帽子

魔導兵に帽子を預けるところが、なんとなく好きです。特に必要のない動作だけれど、キャラクターが現れていますよね。

ルートを分ける問題の選択肢ですが、アーデンにとって、イグニスを帝国へ連れて行くことにどんな意味があったのか良くわかりません。本編CHAPTER13のプロンプトの代わりとしても、そもそも、そんな理由付けがなくてもノクトは帝都まで行ったと思うんですよね。アーデンはノクトを見縊っていた、ということなのかも知れないですが……。
その上で、EXTRAルートは、イグニスがあの状況で光陽の指輪を持って行けたことが疑問ですし、謎の声が全部解説してくれる親切設計にも突っ込みたいところです。

本編ルートの方が、総合的には重みがあったし納得もしました。

それ使えるの?

指輪を装着した直後のゾクッとする感も、こちらの演出の方が好みでした。
そして、イグニス1人はノクトの死の運命を予感しながら、最後は殉ずるつもりで旅を続けていたのかと思うと、イグニスにとってのChapter10以降と10年の途方もなさに、愕然とさせられます。

しかし、EXTRAルートは戦闘直前の展開と、命を賭けた戦闘が熱すぎて燃えました。

そんな運命はオレが断ち切る

王の運命を変えるため、すべての命を差し出して戦う! これこそ主人公ですよ!
加えて、少し「メタ」な話ですが、一度本編ルートを体験した後だからこそ、「ノクトを死なせない」というイグニスの気持ちがより強く出たように思います。

妹を助けるのに理由がいるのか?

またこういう台詞も、イグニスの中に積み重なっていたのでないか、と思ったりもさせられました。EXTRAだからこその、本当に凄い展開だと思います。

それにしても、ファントムソードを使うアーデンと、指輪全開のイグニスが戦うと、エフェクト過剰で、戦闘画面はしっちゃかめっちゃか(笑)。命の時間制限があったので焦りましたが、ギリギリに撃破できました。

アーデン戦

初めてアーデンの鼻を明かした感もあって、爽快でした。

10年後のレイヴス含めた全員で最終決戦、の流れはやや都合が良すぎるかもしれません。
でも、「運命に従う」人々のお話だったFF15で、最後のDLCに「運命に抗う」人が登場して、すべてをひっくり返した大逆転劇は本当に面白かった!
1年間、追ってきた甲斐があるDLCでした。


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参考記事

PS4のアクションADV「リトルウィッチアカデミア 時の魔法と七不思議」体験版を遊びました。
http://game-littlewitchacademia.bn-ent.net

リトルウィッチアカデミア

体験できる範囲は、カノープス遺跡のボスを倒すまで(以後、引き続きプレイも可能)。
ゲーム内アニメシーンは一部省略されており、割と肝心なシーンが紙芝居状態に編集されていました。製品版にデータを引き継いだ場合、アニメシーンを後から見返す機能があるのか気になります。

私は原作アニメ未見ですが、ちょっと素敵な雰囲気に惹かれたので触れてみました。
キャラクター登場時などに「思い出を振り返る」という選択肢を選ぶと、アニメダイジェストと共にアッコが人物像を語ってくれます。

ダイアナ

この機能のお陰で、キャラクター像や人間関係は問題なく把握できました。

アニメの雰囲気通りのトゥーンレンダリング、モブまで完全フルボイス、原作アニメ製作会社によるアニメムービー、作り込まれた学園内を走り回れるーーなど、キャラゲーとしてはよく出来ている方だと思います。

ADVパート

アッコたちの部屋

割とすぐ仲間が全員集まって、好きなキャラクターを使っていけるのも良いですね。

しかしゲームとしてのシステム周りは、まったく褒められないと思いました。

例えば、前述の学園内がしっかり作られているのはファンアイテムとしては素敵なことだと思うのですが、ゲームとしてみると、ただ広くて移動がダルいだけです。
しかも悪いことに、マップが分かり難いです。全体マップを表示してもわかるのは目的地と自分がいるエリアだけで、具体的な現在位置が分からないので、位置関係を掴めないことが多々ありました。

アクションパートは、ベルトスクロールアクション+エリア探索タイプ。

アクション

魔法が飛び交う画面は結構派手で良いけれど、非常に動きが遅いので、見た目ほど爽快感はありません。
味方AIも役に立ちません。後方から援護射撃してくれるのは良いけれど、軸がズレていても延々と固定位置から射撃するだけで、攻撃が当たるかどうか判断しないようです。セットしても回復魔法を使う様子がありません。また、敵がいないと少し遅れて操作キャラに追随するだけで、落石などを自分で躱してくれないのもストレスでした。

ただ、個人的には自作ゲーム妄想「院deゲーム アクション編」(2010年11月28日記事)のイメージに近いこともあって、惜しいと思います。

ステータス

操作キャラクター(リーダー)固有の能力があったり、ステータス割り振りで好みの成長をさせられるなど、好感触な部分もありました。
ゲームとして肝心の「動かしていて楽しい」感がないのは、本当にもったいないです。

クリア

そんなわけで、アクションゲームとしてはイマイチと思ったけれど、原作ファンであれば「キャラクターゲーム」として楽しめそうな印象は受けました。
原作付きゲームとしては、それで正解なのかもな、と思います。

朝井まかて著「阿蘭陀西鶴」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
俳諧師・西鶴の娘おあいは母を亡くし、父と暮らすことになる。甲斐性なしで勝手気儘に振る舞い、母の死や全盲のおあいを引き合いに自身を喧伝する父と憎むおあいだったが、西鶴が書き始めた浮世草子の朗読を聞き、物を見たことがない自分でも、描写から感じて掴むことができる喜びを知る。

面白かったです。
井原西鶴の半生を直接書くのではなく、盲目の娘の視点から、破天荒な父、俳諧の師、そして作家としての西鶴を描いているところが秀逸だと思います。最初は思春期のおまんと一緒に西鶴に苛々するも、彼女の心が解けていくと同時に、家族思いのいい父親じゃないかと印象が変わっていきました。

西鶴の移り気に合わせて、あちこち話が飛ぶところはありましたが、それぞれの出来事は細い糸で繋がっていたと思います。
「好色一代男」だけでなく、様々なジャンルの先駆者だったとは知りませんでしたが、それら作品を生み出す原動力は、博識だけでなく、こういう「イラチ」なところにもあったのでないかと思わされました。
西鶴の作品を読みたくなりました。ただ、さすがに現代語訳でないと読めないでしょうね。

DLCコンテンツ「EPISODE イグニス」をクリアしました。

エピソード イグニス

注意:ゲーム本編・映画・アニメネタバレ満載です。
現在FF15プレイ中でネタバレを気にされる方は、進行状況を確認の上、ご自身の判断でお読みください。

CHAPTER 1に結構ボリューム感があったので、今回は意外と長いDLCなのか?と思いましたが、CHAPTER 2は一本道、CHAPTER 3はボス戦のみと、結局コンパクトな内容でした。
本筋だけ追った場合のクリアタイムは1時間30分程度。クリア後に選べる、もう一つのルートも含めても2時間程度ですね。

EPISODE イグニス クリア証明書

でも今作はもう少しやり込んでも良いな、と思う程度には面白かったです。特に「オルティシエの記録」は本編の裏事情が見える要素もあるので、全部集めたいです。

イグニスを操作しての戦闘は、アクションと範囲・威力が異なる3つの「属性」を使い分ける形式。本編でイグニスが「スタイリッシュ」と言われていた理由が良くわかる、キビキビとした格好いいアクションで、動かしていて楽しいです。

イグニス戦闘

上空から敵を確認できる「タクティカルオペレーション」も、戦闘上の意味はないけれど、新しい視点で面白かったです。

タクティカルオペレーション

陣取り合戦的な要素には、できれば報酬が欲しかったかな。

ちなみに、今回は難易度高めと聞いたので、開始時の難易度設定に悩みましたが、NORMALでプレイ。結局のところ、本編同様アイテム類が優秀なので、そんなに難しいところはなかったかな。
唯一、スニークキルする箇所で時間切れGAME OVERを喰らいました。難易度設定と関係ないところで全滅するあたり、私らしくて笑えます。

イグニスではシフト移動ができない代わりに、魔導兵の装備を使った「フックショット」での移動が可能。これまた爽快です。オルティシエは建物が繋がっているので、屋根の上をどんどん飛び渡るのが楽しかったです。

魔導フックショット

足を踏み外して変な場所に落下することも多々ありましたが、フリーズすることはなかったし、移動ミスで詰まないよう、泳ぎ移動なども用意されています。Assassin’s Festival以上に自由な探索ができるとは驚きでした。

物語は、CHAPTER 9で水神啓示後のノクティスが気絶している間の、イグニスが失明に至った原因を描いていますが、クリア後にはCHAPTER 10の前にイグニスがノクトにある提案をしていたことや、CHAPTER 14での最後のキャンプ後にも2人で会話していたことなどが盛り込まれ、まさに本編補完というべき濃密な内容でした。

イグニスが抱くノクティスへの友情ーーあるいは父兄のような感情と、「プレリュード」アレンジの相乗効果で、最後のキャンプのシーンは少々涙が溢れました。

イグニスに対しても、レイヴスに対しても好感度が上がりました。

レイヴス戦

なお、レイヴスと共闘することが事前に明かされた際、どうせなら遊んで初めて仲間になる方がインパクトがあるのに、と不満に思ったけれど、サポートキャラクターだと思っていたが故に、CHAPTER 3で突如、レイヴスとの決闘に転じるのは熱かったです。

レイヴス戦

「理屈だ お前の言っている事は何もかも」というレイヴスの叫びは、確かにその通りだから胸を突いたし、理屈で武装したイグニスだって、最終的には感情論の行動を取るのですよね。
予定されていた最後のDLCに相応しい、満足度の高い内容でした。
唯一、イグニスが知る筈のない、ニックスの話が出たところは少し違和感があったけれど、そのくらいは目を潰れるかな……。

通常ルートの話だけで長くなったので、if ED(CHAPTER EXTRA)については、別途まとめます。


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