• 2015年06月登録記事
林望著「イギリスはおいしい」

イギリスの食生活を中心としたエッセイ。
タイトルに突っ込みたくなりますが、確かに食材は悪くないんですよね。料理方法が根本から間違っているという点が、イギリス料理の致命傷だと私も思っていますが、自分でも料理をする作者が、いかにイギリス人が不味く調理をするかということを丁寧に説明しているので、面白かったです。

田中芳樹・土屋守著「『イギリス病』のすすめ」

両氏が大学の同期であったことから実現した、イギリスに関する対談本。
毎回テーマを決めて語っているので、さほど脱線もせず、それなりにまとまっています。1997年発行の本であるため、感覚が古いところはありますが、イングランド、ウェールズだけでなく、スコットランドのクランなど、イギリスに関する雑学本としてさらっと読めます。
個人的には、土地の問題は面白い提言だと思いました。

ただ、私自身はイギリス好きですが、両作とも、そこまで日本を悪し様に言わなくても、と思う面もありました。

感想は6月分でまとめる予定ですが、「血界戦線」11話を見て考えた別件について。

原作の「血界戦線」ファンは複雑でしょうが、私は原作をちゃんと読んでいないこともあって、今回のアニメオリジナル要素も十分楽しめました。
だから、ホワイトが本名で呼ばれる度に私の肝が冷えたのは、オリジナル部分の出来とは関係ありません。「メアリー」という彼女の本名が「メアリー・スー」に繋がるせいで、一々オリジナルキャラクターだと意識してしまったせいです。

(メアリー・スーに関する簡単な定義)
二次創作の作り手に贔屓され、原作のキャラクター以上に活躍するオリジナルキャラクターのこと。

しかし、私の「メアリー・スー恐怖症」はいったいなにが原因なのか、自分でも疑問です。
私が見ていて、メアリー・スー的なオリジナルキャラクターに乗っ取られた作品というと「スレイヤーズTRY」がありますが、私は「TRY」好きなので、これをトラウマとは言えません。いや、企画に対する疑問は持っていますけれど、ヴァルガーヴが好きなので批判できません(笑)。

では、私は遭遇したこともない「メアリー・スー」に怯えているのでしょうか。
それもまた違う気がします。
彼女への恐怖心は、身近く、常に潜んでいます。彼女は、言わば私の中にいるのです。
オリジナルであれ、ファンフィクであれ、物を書いていて、思い入れのあるキャラクターを持ち上げすぎてしまった経験。
そこに、私は私のメアリー・スーの影を感じ、怯えているのだと思います。
とすると、良くも悪くも私の作品に爆発力がないのは、そういう自制の結果なのかもしれません。

田中芳樹著「タイタニア」全5巻

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
全宇宙を実効支配するタイタニア一族。だが、タイタニアの有力者を奇策で破ったファン・ヒューリック提督の出現を引金に、一族の長たる藩王の後継を巡る争いが表面化した。藩王の煽動で若き公爵同士が闘い、抗争の末、タイタニアはすべての有力者を失い、宇宙はタイタニアの支配から解放され、秩序なき時代へ突入する。

一見似たようなパーツを使って、「銀河英雄伝説」とは逆の方向を目指したと思われる作品でした。
途中、刊行が途絶えた時期があり、その境目が3巻なわけですが、この巻が滅法面白いんですね。2巻までは割と地味な話という印象だったのが、3巻で焦点が決まり、ついにアリアバードとジュスランがイドリスと全面対決することになる。
……というところで、再開の見込みなく二十年も放置された当時の読者は、堪らないですね。
二十年ぶりに出た続刊である4巻は、3巻からの流れがちゃんと生きているし待ちに待った艦隊戦で引き込まれましたが、完結となる5巻は、終盤に辻褄の合わない箇所があったり、ゼルファの処理が適当だったりと、風呂敷を畳むことに集中し過ぎて色々手抜かりがありましたね。

新しい時代を作るエネルギーがあった「銀河英雄伝説」に比べると、破滅を描いた作品であるため、主要人物であるジュスランが自虐的で熱量を持たないキャラクターであることが面白いなと思ったのですが、最終的にはすべて藩王の狂気としてタイタニアの滅亡をまとめてしまったのが残念でした。内部崩壊を願うものが頂点だったら、滅亡するのは当たり前というか……。
タイタニア一族はほとんど全員が、誰かの足を引っ張ろうとしていたり底意地の悪さを持っているので、アリアバード、バルアミー、リディア姫といった、清涼剤のような面々が余計に好ましく感じられました。
アリアバードに関しては、元々誠実で地味というポジションがキルヒアイスやミュラー的で好きだったのが、3巻の「きどるな、ばかっ!」で頂点に達しました。
バルアミーは、青臭さが良い。
リディアは、最初はこまっしゃくれた子供かと思いきや、とても聡明ないい子で、けれどただの純真無垢ではなく、自分と祖国を高く売りつけようとする計算高さも持ち合わせた、素晴らしい王女様でした。
ちなみに、ジュスランには「将軍にならなかった慶喜」という印象を持ちました。

TVアニメ「アルスラーン戦記」12話「騎士の忠義」
http://www.arslan.jp

エンドカードは、前回に引き続きキャラデザの田澤潮氏。

アニメスタッフはまさか、「ダリューン1人で5万の兵士を倒せる」という放言を本気に受け取っていないですよね?
冗談の筈が、本当に一騎当五万の無双っぷりを発揮したので、今後が心配になりました。
地行術の魔術師をダリューンが単純な武勇で撃退してしまい、ナルサスの知略発揮が減らされたのは残念です。ダリューンも良い武将だけれど、パルスの文化を破壊(笑)してまで軍師に迎え入れたのだから、そのナルサスが活躍しなかったら意味がないし、個人の武勇ではなく奇策が物を言うのが面白さだと思います。
私は、アニメオリジナル展開が一律で悪いとは思わないけれど、オリジナル展開にするなら、原作と違う面白さを加味して欲しいと思うのです。
少なくとも、武勇を見せて面白くしたいのであれば、バトル描写の演出をもっと巧くして魅せるアニメにするとか、もう少し頑張って欲しいです。
それとも、今話は「アルスラーン戦記×無双」の宣伝を兼ねていたの?

そういうわけで、不満は感じたのですが、通常運転のザンデとイノケンティス七世には癒されました。
ギスカールの「悪い顔」も凄く良かったです。
アルスラーン一行では、ファランギースの容赦のなさが相変わらず光っていました。

そういえば、アルフリード初登場回でしたね。ダリューンのインパクトが強すぎて忘れていましたが、声が可愛かったです。