22日の宝塚花組東京公演「太王四神記」11:00(VISA貸切)。
原作ドラマは未見。
エンターテイメントとして面白い舞台でした。
物語としては、24時間ドラマを2時間10分に収めるため大変な駆け足を強行している為深く感じ入る余韻がないとか、結末部分等に消化不良感が残るだとか、微妙に会話が噛み合ってないとか、突つく程問題が出てきます。根がゲーマーなので、「4つの神器とその護り主を集めてラスボスに挑む」と言う展開が、RPGっぽい作りだなと思ったくらい、ある意味お使いイベントの連続だし。転生物なのに、あんまり関係ないどころか、前世と今生で結ばれる相手が違うため違和感を覚えるのもどうかと思います。
でも演出力は流石の小池先生だし、動けるキャストは総出演って感じの常時大量キャラ投入に、場面転換がどんどん行われてセットが動き、常時上手も下手も大忙し。観て面白いか面白くないかと言えば、面白いです。
今回、舞台自体殆ど見ない初宝塚観劇の友人&宝塚二度目で舞台も良く見る友人の三人構成で観劇したのですが、注目して見てる人が全然違って面白かったです。
普通、初めて見る人はスター3人程度しか把握出来ないものですが、このお芝居、大量のキャラが登場してガヤガヤやってるので、結構端まで目に留まる模様。初観劇の友人が、驚いたことに新公学年の下級生に目をつけると言う収穫がありました。
ただ、男役の露出が充実している反面、娘役の演じる役が少ないのが残念。しかも、スジニやカクダンと言った数少ない目立つ女役を男役が取っているのは可哀想では。
舞台上の、タムドク@真飛聖とヨン・ホゲ@大空祐飛の力関係は、非常に良く練ってあったと思います。
主役は確実にタムドクで、最初から最後まで観客に対しては正統な王だと示されている。ホゲは最初は同じくらい陽の位置にいるけれど、その時は比重が軽く、タムドクと並び立っていない。けれど転落して陰の位置に進むにつれ、逆に物語の中での比重を増やして行く。それは、彼が王の資質を失ったから、物語上タムドクと並んでも問題なくなると言う皮肉でもある。
タムドクは正直整合性はないけど、真飛聖の大らかな雰囲気で憎めないヒーロー像にしている感。
一方ホゲは、冒頭は未だに銀ちゃんを引き摺ってるのかなと思う軽い印象の演技でしたが、どんどんダークサイドに傾いて声も演技も重くなり、眉間に皺が寄っていって、それと共に魅力を増すあたり、破滅型ヒーローに定評のある大空祐飛ならでは!
実は、最初は事前の情報程ホゲがハマっては見えず、どうかなと思ったのですけれど、場が進むごとに大空祐飛とホゲが一体化していって見えました。
あと不思議なのですが、精神が荒むに連れてホゲがどんどん強くなっていったように思います。直接殺陣に加わっている高句麗一武道大会よりも、軍を率いてる二幕の方が強い武将に見えました。ホゲの強さを表現することは、そのホゲと渡り合うタムドクの本当の実力も凄いんだ、と言う説得力を持つわけで、一騎打ちの時、実力伯仲と言う雰囲気が出ていたのは凄いなぁと思いました。だって、武道大会でホゲが一度負けてる事なんて、あの瞬間忘れてましたもの。
後述しますが、他の役もドラマ原作の御陰か役数が多くそれぞれのキャラも良く立っていて、リピート向きの演目でした。
ちなみに、後半に二回目の席も抑えているのですが、また同じような下手位置なのが悔しいです。でも今度は二階だから、フォーメーションは良く見えるに違いないと、期待してます。
と、賞賛度が高いので、敢えて苦言を。
演出の中で、不満があったのは黒朱雀2体とラストの大仕掛け。
セオ黒朱雀は、炎の効果はよく判ったけれど、肝心の朱雀自体がただの羽根の塊みたいで、舞台奥だから良いけれど近くで見たら着ぐるみショーになるのでは?と言う印象。もっと派手にして上げたほうが良かったと思います。
キハ黒朱雀も、同じことが言える上に、謎の振り付けで唖然。前衛的過ぎてよく分かりませんでした。
そもそも黒朱雀が何なのか、が良く判っていないのに申し訳ないですが、私なら、キハの身体を突き破って中から黒朱雀が羽根を広げている、みたいな感じで、黒朱雀自体を大きな仕掛けにして、キハ自身は殆ど動かないと言う形を代替案に上げたいです。
それと、もう一つの大仕掛け、つまりクレーンですが、スモークをもっと炊いて、照明を巧く使わないと丸見えして興ざめ。そして揺れてて怖いので、クレーンじゃなくても良かったのでは?と思う。確かにスター二人が席の近くまで迫るのはサービス感があるけれど、見ようによっては、二人が筋斗雲に乗ってるみたいで、お笑い状態です。
演出以外の不満では、楽曲の力が弱いこと。これまで本公演の一本物だと、大曲だったりキャッチーだったりと曲に力があるものだったんですが、それがない気がします。もっとも、この辺はいつもの宝塚歌劇の歌なだけで、一本物と思って期待値が上がってる分理不尽な要求かもしれません。
あ、あと純粋に文句を付けたいのは、拍手タイミングが難しい事かな。貸切だったせいかも知れませんが、揃った拍手が入ってなかったので気になりました。
それでは、以下は各役について思い付くまま書いたら多過ぎたので、別記事に送ります。