• 2015年08月登録記事

TVアニメ「アルスラーン戦記」18話「ふたたび河をこえて」
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エンドカードは藤村緋二先生。
久し振りに、突っ込むところもない1枚だったと思います。

今回は1話の間にラジェンドラの二枚舌っぷりが満載で、想定内のクズっぷりに笑ってしまいました。ラジェンドラの、なにを言っても信用できない雰囲気は凄まじいですね。
あんなにナルサスが知恵者だと分かっているのに、策略を巡らそうとするラジェンドラは、本当にポジティブな男だと思います。

まだ配下に加わるとも分からぬジャスワントに、出自の問題を喋って良かったのかは疑問ですが、結果的にはそれでジャスワントの忠誠を引き出せたと言えるのかな。
ゆっくり展開なのに説明が微妙に不足している辺りは、いつものことですが、アルスラーン戦記にしては展開も早かったと思います。
処刑の宴ではカメラが手ぶれしているような珍しい演出もあって、美術的にも楽しめました。
また、アズライールのカットが多かったのが印象的でした。

浅葉なつ著「神様の御用人」

【あらすじ】
神様の御用を聞く「御用人」の代理を命じられたフリーターの良彦は、狐の方位神・黄金とともに、信仰を失い力を失った神々のために奔走する──

短編構成。
オチ等は概ね想像通りで、物語の筋の出来が特別良いとは思わなかったけれど、特定の信仰を持たない私が見ると、神というテーマがその時点で非日常ですし、サクサク読めて面白かったです。
特に、黄金をはじめとする神様たちのキャラクターが立っています。これも、ライトノベルや漫画でよく見る性格付けの範疇ではあるのですが、オリジナリティはなくても生かしていれば良いと思います。個人的には、一言主大神がお気に入りです。

作者が「神社参り」好きというだけあって、立地説明等がきちんとされているため、聖地巡礼がしやすそうです。楽しいでしょうね。
ただ、登場人物が全員標準語なので、京都という設定は頻繁に忘れました。東京設定ではいけなかったのかしら。

関屋晋著「コーラスは楽しい」

合唱指揮者・関屋晋が合唱指導やコンサートについて記した本。
関屋先生が、指揮や合唱の勉強をしたわけでないということに驚きました。それに、すべてアマチュア合唱団だったのですね。
でも、高みに楽しく挑戦していく素晴らしさを感じました。きっと指導は凄く厳しいんでしょうけれど、付いていける情熱があるチームが羨ましいです。

合唱者として、とても勇気付けられる言葉があり感銘を受けたので、最後に引用します。

わたしはよく、アマチュアコーラスを「大阪城の石垣」にたとえます。「石垣」をつくっている石の大きさは決して一様ではありません。大きくて立派な石もあれば、小さくて目立たない石もあります。しかし「石垣」の強さ、そして美しさは、それらが積み重なり、支え合っているからこそなのです。アマチュアコーラスの魅力はこれです。

三谷幸喜著「気まずい二人」

酷い本でした(笑)。
盛り上がらず、噛み合わない対談本。怒って帰ってしまった相手がいるというのも理解できます。
噛み合ない会話を楽しむ二人芝居として作られている側面が強いのでしょうし、コメディなのは分かるけれど、クド過ぎると思いました。
大体、なぜ話が止まったとき用に用意してあるネタが「枝豆は大豆」なんですかね。どうでもいい話だし、そこから先に発展もしないので切り札として弱過ぎます。
要所では面白い箇所もあっただけど、実在の人物同士で実際に交わした話だと思うと、時間の無駄だと感じてイライラしてしまいました。でもそれを読んでいる自分はもっと無駄だと言われれば、それはその通りです。

3DSダウンロードソフトより、お店経営系2作品の体験版を遊んでみました。

別メーカーのソフトですが、どちらも同じような作りの「アトリエシリーズ」タイプの作業ゲーム。冒険して材料を手に入れ、その材料を組み合わせて商品を作りお店で売る、という構造になっています。
驚いたことに、元々携帯電話向けアプリとして作られて、3DS移植されたという流れまで一致しています。

「不思議の国の冒険酒場」は、元々アトリエシリーズ制作に携わっていたスタッフの作品ということで、アプリが発売されていた時点で気になっていたので、今回遊んでみました。
ここまでアトリエシリーズ通りで良いのか心配になるくらい、錬金術を料理に置き換えただけ。明確な違いは、戦闘では経験値が溜まらないことくらいでしょうか。

「王国の道具屋さん」の方が、多少オリジナリティがあります。
それは、主人公が商売人に徹している点です。
「冒険酒場」はRPGなので、主人公がモンスターとも戦いますが、「道具屋さん」は戦いは傭兵に任せ、攻撃と防御の指示切り替えと、モンスターを攻撃すると飛び出てくるアイテムを拾うことが主人公の仕事です。傭兵という設定上、装備品を整えてあげたりする必要もないのが、個人的には気に入りました(直前に「冒険酒場」で、金がないのに仲間の装備を整えてあげないといけないことにストレスを感じたので)。戦闘は勝っても負けても傭兵が成長していくし、拾ったアイテムも手に入るので、探索が一切無駄にならないのは良いと思いました。
また、お店経営部分に関しては、スリープ中のみならずゲームを起動していない間も時間経過して、勝手に売り上げていくというのが嬉しいですね。
主人公は喋らない系なのでストーリーはないけれど、その分、主人公を愛情深く見守ってくれる「じい」が可愛いと感じました。
システムの動作には少し重く感じるところがありますが、戦闘中にアイテムを拾うというゲームシステム的にわざと遅めの調整がされているのだろうと納得しました。実際、ゲージを消費すれば早足にできますからね。

価格がバーチャルコンソールより高いのが惜しいところ。
500円以下なら、体験版を楽しめた分のお返しとして買っても良かったのですが、800円と言われると悩んでしまうのが面白いですね。
1,000円分の任天堂プリペイドカードは持っているのだけれど、これは「CRIMSON SHROUD」お布施用なんですよね……。

星新一著「城のなかの人」

時代小説5作を収録した中編集。
星新一といったら「SFショートショート」と思っていましたが、時代小説も書いているのですね。
淡々と俯瞰する文体や会話の軽妙なやりとり、物語の締めかたなどは、星新一らしさが溢れていると思いました。

表題作「城のなかの人」は、秀頼がいつまで経っても幼過ぎるように思いましたが、大阪城で果てるラストに悲壮感がないのが独特ですね。

春風のあげく」「すずしい夏」は舞台が江戸時代というのみで、後は創作のようです。
藩の財政を良く見せようと粉飾する「すずしい夏」は淡々と描かれる飢饉の様子が、悲惨なのに笑えるという悪辣な作品。オチも含めて全体的にヒヤっとさせられました。

面白かったのは「正雪と弟子」。
由比正雪の慶安の変がネタになっていますが、正雪は叛乱をする気はなく、浪人連中を口車に乗せただけだった、という「な、なんだってー!」な星作品らしい味付け。正雪の出任せ講義が面白くて秀逸でした。

はんぱもの維新」は、明治維新という血みどろの時代で、主人公たちも死んでしまうのに、どこかコミカル。
全体的に、星新一作品には温度と湿度がなく、そこが味わいなんだろうと思いました。