• 2017年03月02日登録記事

能町みね子著「お家賃ですけど」

芸能関係に疎いので、作者のことも、背景も知らず読みました。
裏表紙解説には「自叙伝風小説」と記されていますが、実際はmixiの日記を再構成した本とのこと。エッセイと考えて良いのでないかと思います。読んでいる最中、独特で面白い感性だと思う部分と、プロの物書きであることを疑う部分が混在してたので、mixiとわかって納得しました。
なお、巻末にあるmixiの日記再現ページは、ひらがなが多過ぎて目が滑りました(わざとやっていることも書かれていたけれど)。本編は漢字変換されているので、普通に読むことができます。

軽妙な題名から、ほのぼのした下町ものを想像して読み始めたので、若者特有のもどかしさ、不安定さがそのまま描かれた日々に驚きました。もっとも、あらゆる事象が非常に淡々と書かれているし、性転換に関する事情もほとんど触れないので、筆者の心理状態を斟酌せず読むことも可能です。
下町の風情に浸れる部分ももちろん含まれていて、勝手に「加寿子荘」と呼んでいる下宿のようなアパートと、牛込への愛が溢れていて、神楽坂周辺を楽しく散策している気持ちになりました。
私自身は、こういうアパートで暮らすのは無理ですけれど……。