• 2010年11月05日登録記事

今回は1場だけですが、密度が濃いです。

【1幕第9場 カフェ(D)】
カフェに、ラズロと連れの女性イルザが現れる。イルザとリックはパリでの知人だった。二人は再会に動揺する。

4回目の更新でようやくヒロインと二番手が登場。DVDの再生時間だと、開演後28分での登場ですね。特別待たされた感じがしないのは、キャストでなく舞台自体が魅力を放っていると言う事を示しているのかなと思います。
実は観劇するまで、演じる蘭寿とむの持ち味からラズロは武闘派寄りになるかも知れないと思っていました。しかし極限まで抑えた佇まいで、映画同様、知的な紳士になっていると思います。時々仕草(傷のシーンなど)がキザになるのはご愛嬌。
イルザの方も、演者の持ち味とは離れた役ですね。ビジュアルの説得力が欲しいところですが、このシーンでの鬘と帽子の相性があまり合ってないと思います。登場した瞬間眼を惹く美貌、とはいかないのが残念。

大尉からリックの名を聞いて動揺を見せるイルザですが、ラズロと少佐の会話が始まると、直ぐそちらに意識を切り替えて、以後台詞の上では動揺を見せないし、サムには「昔は嘘をつくのが巧かった」なんて言い返すくらいなので、随分強い女性だと感じていました。でもDVDで観ると、サムから牽制されて泣き出しそうになっているのですね。
リックといつ鉢合わせするか分からない場所で、思い出の歌をリクエストするのだから、多少覚悟はあったのでしょうに、リックと再会した瞬間、動揺をまったく隠せていないところに、女を感じます。
一方リックは、DVDで観るとイルザとの再会に茫然とした感じ。東京公演時の印象だと、もっと眉間の皺が凄く険しい表情だった気がします。
イルザは少し戸惑いを見せつつ笑顔を繕うのですが、その後リックが卑屈な対抗意識で際どい発言をするので、表情が完全に抜け落ちちゃうんですね。時々リックを伺うのと、自分の中に沈んでいくのとを繰り返しているのが僅かな視線の動きで現されていて、これはDVDのアップでないと観えない繊細な演技だなと感心しました。
また、リックが座る席の周辺だけ、どんよりした暗いオーラが漂っていて、照明も暗いように感じるのが面白いです。
群衆劇が面白過ぎて、舞台観劇時の後半はメインでないところを観ていたため、改めて真ん中の芝居を観ると気付きが沢山ありますね。

今更気付いた細かいこと。
サムの移動ピアノを準備するのは、ビゴーの役目だったんですね。いつの間にか用意されているので、舞台では気付きませんでした。彼はカフェ一番の働き者だと思います。彼が主役のSSも考えてあるんですけれど、形になる日は来るでしょうか。