• 2013年12月登録記事

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PSゲームアーカイブス「Prismaticallization」を始めました。
→Prismaticallization ソフトウェアカタログ

「超クソゲー2」に載ったことで有名なギャルゲー。
ギャルゲーとは思えないシンプルなタイトル画面にまずビックリしましたが、独自の癖があるだけで、割と面白い作品だと思います。

このゲームは、主人公・射場荘司が巻き込まれた1日の「ループ」(同じ1日の循環)から脱出することが目的のADVです。
但し、主人公たちは1日がループしている自覚がなく、しかも、ごく普通のADVにある会話の選択肢がありません。
このループから脱出するには、1日の中で起きた出来事を「記録」すること(最大5つ)。
「記録」は次の周回の特定タイミングで「解放」され、前に体験した1日とは少し違う出来事が起こるようになります。
例)扉の鍵を開けて、その状態を「記録」する
 →次の周回で「解放」され、最初から鍵が開いた状態になる

「記録」と「解放」の法則性をずっと考えるので、「フラグ管理するパズルゲーム」みたいな感じです。

ちなみに、現在20周ほどしていますが、まだループ脱出の糸口は発見できていません。
パズルゲームだと考えた場合、私が非常に苦手なジャンルなので、自力クリア出来るか怪しいと思っています。
そんな状態ですが、主人公(射場荘司)のキャラクターが良いので楽しいです。
理論武装する性格で、地の文に趣きがあります。以下、有名な「グーで負けた」の台詞を引用。

そもそも荷物持ちをジャンケンで決めようと言い出したのは柊だった。
酷くノスタルジックで、極めて幼稚な提案だ。……勿論、俺が負けたのだが。
グーで負けた。グーで負けるというのは、保守的なために敗北したかのような、苦い後悔が残るものだ。しかし、たとえ俺が勝利したとしても、だ……
いい年をした高校生の男が、連れの女子に、自分の荷物を持たせてご満悦……などということが、ありえるだろうか? いや、あるまい。
そのときは、いやヤッパ俺が持つよ、などと言いつつ、彼女の分も担ぐのが男というものだろう。
一応、今時の女子高生である柊が、その程度の打算を働かさないとは考えられない……
これは、仕組まれた巧妙なワナだったのだ。

じゃんけんでここまで考える主人公、最高ですね。
この思考が嫌いという人が多いのも理解できるけれど、私は凄く好きです。

梨木香歩著「西の魔女が死んだ」

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
不登校の中学生まいは、大好きな祖母の家に預けられる。祖母の教えや田舎暮らしでまいの心は次第に解れるものの、ある日、嫌悪感を抱く隣人のことで、祖母と大喧嘩をしてしまう。その直後、まいは両親の下に帰ることになった。2年後、祖母が亡くなり、まいは確執を残したまま別れたことを悔やむが、窓ガラスに残された祖母からのメッセージで、魂は生きていると信じ癒される。

センセーショナルな題名の児童文学。
実は長年、「西の善き魔女」と混同していました。本作もファンタジーではあるけれど、異世界ではなく現代日本が舞台のお話。魔女というのも、自然を利用したシャーマン的な存在でした。

おばあちゃんとの日々は穏やかで美しく、こんな生活をしてみたいと思わされます。示唆に富んだ台詞の数々は、正に思春期の少女の為の物語だと思いました。特に、結末に関わるおばあちゃんの死生観は見事です。
現代社会に対する説教的な側面もあるのですが、非常に穏やかで柔らかい説教ですし、死を扱いつつも、お涙頂戴の展開ではないので、やんわり染み込む読了感があります。

なお、表題作の他に、その後のまいを描いた「渡りの一日」が収録されており、おばあちゃんの教えを守って成長したまいを見ることができます。
良いサービスではあるけれど、「渡りの一日」自体は少々退屈な話で、単品としてはあまり面白くなかったのが残念でした。

発売日後に配信開始された「ゴッドイーター2」序盤まるごと体験版(PSP版)を遊びました。
http://www.godeater.jp/

→発売前体験版の感想は、2013年8月4日記事参照

気になる体験版ボリュームは、難易度3に入ったSTORY27(ルフス・カリギュラ戦)まで。
繰り返し遊べるMISSION数は、通常難易度が28個、高難易度が17個。キャラエピソードは、シエルEpisode3、コウタEpisode3、エリナEpisode2、エミールEpisode2、リッカEpisode2、ギルバートEpisode4、ハルオミEpisode2まで。
相変わらず、大満足のボリュームです。当然、データサイズも大きく、約800MBありました。PS Spotの貧弱な回線でダウンロードするのはかなり厳しかったです。前作のように、ネット上から取得できるようにして欲しかったかな。
なお、次のイベント発生フラグはサカキ博士との会話と思われますが、体験版では支部長室に博士が配置されておらず、フラグが立たないように調整されています。
ストーリー的には、とても区切りが良い所で気持ちよく体験版を終えられるのですが、逆に言うとBURSTの時に感じた「製品を買ってこの先の物語を知りたい」という欲求に繋がらなかったので、体験版としてはやや失敗かも知れません。

発売前体験版ではロックされていた要素が開放されたほか、UI、演出、武器の挙動で細々改善された点も多く、さすがに製品版の完成度です。お金を払わずに此処まで遊べてしまうことが申し訳ないくらいです。
ゲームシステムとしては、BURSTを踏襲しているため評価割愛します。
ちなみに、体験版で遊べる範囲では一度も回復錠を使わずに済んでしまいました。体験版では数回リンクエイドしてもらったことと比べると、難易度はやや下方調整されているのかな。
仲間NPCのAIが優秀になっていて、ホールドトラップを使ったり、回復柱を立ててくれる御陰かもしれません。
ただ、コウタ以外は全員新型(第二世代)なので、今後AIが成長するとあまり戦闘時に個性を感じなそうな気もします。

このゲームは数パターンの地域で戦いを繰り返すので、序盤の移動要塞フライアに乗っている設定とゲーム性が合っていない気がしました。
難易度2の途中から極東支部が拠点に変わると、いつも同じ任務先で違和感がないのですけれどね。
極東では、3年前と変わらぬ前作キャラに会えた瞬間、懐かしくて急にテンションが上がりました。もっとも、キャラクターに関しては、エミールとハルオミという、発売前には公表されていなかった新NPCの2人が非常に「いいバカ」で大好きです。

個人的に残念だったのは、BURSTの頃に私が考えていたより、2の世界は物資が豊かで、結構楽しそうに生活して見えたことです。
コウタのキャラエピソードで、3年前までは状況が悪かったとフォローしていたけど、やはり微妙に違和感がありました。ゴッドイーターの在り方も、以前は「アラガミが来るから撃退する為に怖々出撃する」印象だったのに対し、今作では積極的に狩りに行っている感がありました。アバドンなんか、逃げてるのに追うからね。

購入対象として検討すると、システム面は超進化はしているものの、やることはBURSTと変わらないため、物語を終えたら直ぐ飽きてしまいそうかな、という点がネックです。ちなみに、防衛班班長が出ていればキャラクターへのお布施で買う確率が跳ね上がったけれど、2のNPC内にいたら個性が薄くて悲しいことになっただろうから、登場しなくて正解という気がします。
PS Vistaを持っていれば、画面が美しいという一点だけでも価値がありそう。でも、PS Vistaを買う予定はまだないですね……。

K.M.ペイトン著、掛川恭子訳「フランバーズ屋敷の人びと」全5巻

【あらすじ(最後までのネタバレ有り)】
《第1部》孤児クリスチナは、遺産を狙う伯父に引き取られ、フランバーズ屋敷で成長する。屋敷には、狩猟を愛する粗暴だが魅力ある兄マークと、飛行士を目指す革新的な弟ウィリアムの二人がいた。
《第2部》クリスチナはウィルと駆け落ちするが、彼の飛行機への情熱は理解できず、墜落の恐怖に苛まされ、愛と苦悩の日々を送る。
《第3部》ウィルは墜落死し、未亡人となったクリスチナはフランバーズ屋敷へ戻り、自らが屋敷を切り盛りしようと奮闘する。やがて、少女時代から彼女を支えてくれた使用人ディックへの愛を自覚し、二人は結ばれる。
《第4部》労働者階級で真面目な夫ディックと、上流階級で享楽的な生き方が身に付いているクリスチナは、次第にすれ違っていく。クリスチナは、戦争で傷付き帰ってきたマークを看病するうちに、彼を愛していることに気付く。

当初は3巻までの三部作として発表され、12年後に4・5巻から成る第四部が執筆されています。
5巻まで一気に読み終えた現在、第三部までと第四部で、感想を分けるべきだったと後悔しています。
1・2巻はクリスチナというキャラクターが生き生きと魅力的で、3巻までは少女の成長物語として受け入れられます。しかし4・5巻は彼女を批判せざるを得ません。
その時々で最善を尽くしたつもりが裏目に出た、という全体の流れはあるのですが、思慮が浅く軽卒とも言えます。また、2人の男性の間で揺れるクリスチナの心情も分かるけれど、農場を始めたらディック、社交界に出たくなったらマーク、とその時々で都合の良い男性に擦り寄っているようにも見えて残念でした。
階級社会を体感する資料としては、第四部にも見所があるかなぁ……。
もっとも、私のこの感想は、尊大なマークが好きになれないという理由も大きいと思います。

ちなみに、一番驚いたのは、第4部のクリスチナがまだ20代前半だったということです。
彼女の思考は、もう中年になっているように感じました。車に乗ってレースに出場してしまうくらい新しいもの好きだけれど、実際は昔ながらのまま変わらないでいて欲しいと思っていて、決して先進的な女性じゃないんですよね。

ということで、読み終えた巻への散々な印象語りから始まってしまいましたが、1・2巻は素晴らしい作品でした。
特に、2巻で描かれるクリスチナの恐怖とウィルに必死で付いて行こうとする愛は、若さと愚かさとが愛おしくなる具合です。戦争が始まり、世の娘たちがみんな自分と同じ(恋人の死を怯えて暮らす)ことになったと安堵するシーンはゾクッとしました。
飛行機黎明時代の昂揚感もあって、外に向かって飛翔して行く勢いもありました。

風景、馬、飛行機の描写は全編通して魅力的で、20世紀初頭の古き英国を感じることができるシリーズでした。